くろやんの日記

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【感想・ネタバレ有】様々な立場の目線が交錯する映画、グレイテスト・ショーマン

 

大ヒット公開中、という映画『グレイテスト・ショーマン』を観てきました。

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LA・LA・LANDスタッフが10年かけた、(LA・LA・LANDより先に作り始めたのに、LA・LA・LANDが先にできたそうです)その楽曲や映像としての切り取り方、ミュージカルとしてのクオリティは圧巻でした。アメリカで有名な興行師、P.Tバーナムの自伝とは思えない、アクション映画さながらの迫力ある映画でした。

 

本作は観客からは評価が高いが、批評家からの評価は分かれている、と評されているのが全てを語っているようですが、LA・LA・LANDが芥川賞だとするならば、グレイテスト・ショーマンは完全に直木賞、つまり超大衆的エンターテイメントな作品だったと私は思います。

(そりゃ批評家からの評価は分かれますよね)

 

そんな『グレイテスト・ショーマン』、私はもちろん面白いと感じました。同時に、これがついに日本でも流行る日が来たのか、ということを感じました。

もしもの過程ですが、もう少し前の日本だったらこんなに流行らなかったようにも思うのです。

 

《目次》

▼一昔前なら猛反発?!バーナムが雇い入れた奇抜な人達の存在

▼マイノリティだけじゃない、こういう人からみた世界、が複数描かれている

▼19世紀のことが今、また表に出て、みんなの心をさらった理由

▼おわりに。絶対にクレジットも観るべき映画

 

 

 

▼一昔前なら猛反発?!バーナムが雇い入れた奇抜な人達の存在

物語は19世紀のアメリカ。バーナムは貧しい生まれながら、人々を楽しませたり、笑わせたりするのが好きな少年。

紆余曲折ありながら、バーナムは古い博物館を購入。中々人は集まらない状況で、自分の子どもの「動かない死体より、生きていて動く物が見たい」という一言から、とにかく面白く、これまで見たことのないような人達を集めます。

小人、巨人、ひげが生えた女、曲芸が得意な兄妹、などなど。いわゆる見世物小屋です。

もちろん映画の中の世界でのことですが、一昔前なら、日本では大ブレイクどころか、猛反発運動が起きていたんじゃないかと思うんです。

news.livedoor.com

小人プロレス、というものがあったわけですが、これらは「こういう人達を見せ物にするんじゃない」という声が上がり、表舞台から消えていってしまいました。

奇しくも、映画『グレイテスト・ショーマン』の中にも同じようなシーンがあります。このようなものを見せ物にするなんて、と。19世紀のアメリカで起きたことが、20世紀の日本で起きていた訳ですね。

 

今回映画にも、実際に小人である役者サム・ハンフリー(オーストラリア)が出演しています。今回大ヒット興行中、ということで21世紀の日本では受け入れられた、と言っても良いのかもしれません。

この映画はそういった人権に対する歴史を考えさせられる側面も持っていると、私は感じました。

 

 

 

▼マイノリティだけじゃない、こういう人からみた世界、が複数描かれている

主人公のバーナムだけでなく、いわゆるマイノリティであった人達からの目線でも物語が描かれているシーンが結構あります。バーナムからみたらこう見えるけれど、この人からみたら、世界はこう見えているのよ、というシーンだったり。

 

加えて、金持ちと貧乏人、という視点も登場します。

印象的だったのは、義理のお父さんを見返して、人々を見返して、王女様にも会って、いつしか家庭を置いてけぼりにしてどこまでも上を目指し続けるバーナムに妻が一言、嗜めるシーン。しかし、貧乏だったバーナムが裕福だった君には理解できない、と裕福な家出身の妻に言い放ちます。

これは世間でも、いわゆる「成り上がり」系の人が陥り易い泥沼を描いているように見えました。貪欲であるが故にどこまでも追い求める、その一生懸命さはとても素晴らしいエネルギーです。

そして、バーナムの主張である、「裕福だった人には分からないよね、人に下に見られるこの気持ち」というのも分からなくもないです。

しかし、承認されたい欲というのは果てがないもの。もっと欲しい、もっと欲しい、と思う前に、本当に大切なことが何だったのか、省みて、冷静に目の前を見つめることも必要です。

余談ですが、それを見つめずに欲を追い求めた存在こそが映画『STARWARS』に登場するダース・ベイダーでしょう。(※彼は自分の愛する妻を失うことを恐れた末に悪の帝王になり、全てを失いました)

 

また、金持ち達からの視点も中々に面白いです。バーナムが集めた個性の強い集団に、これは芸術ではない、と一蹴する金持ち達。また、個性的な彼らを見せ物としてしか観ていなかった初期のバーナムの存在もまた、非常に世の中に対して刺さるものがあるように思いました。

金持ちとして描かれていましたが、時に苦労無く育った身分の人は、何の気なしに、マリーアントワネット的な発言をしていることがあります。(「パンがなければ、ケーキを食べれば良いじゃない」みたいな)

私も、過去、都会育ちの夫に「どんなに田舎で育ったとしても、今やインターネットもあるんだから、情報格差がそんなに大きいとは思えない」みたいなことを言われたときは、カチンと来ました。(検索したくても、どんな言葉で検索したら良いのか分からなければ、インターネットも有効に使えません)

まさに、マイノリティ、経済、いろんな立場の人からの目線がまさに交錯している映画でした。

 

▼19世紀のことが今、また表に出て、みんなの心をさらった理由

昔、有性生殖と無性生殖、ということを中学生のときに習いました。無性生殖はアメーバみたいなやつで、自分だけでどんどん増えていけるやつ。

一方有性生殖は必ずオスとメス、男女がそろわないと増えることはありません。

この二種類、それぞれのメリットデメリットも理科で習いました。

無性生殖は早く増殖できるけれど、病気に弱い。みんな同じだから、一つの病気が流行ったら、一気にみんな病気になり、全滅してしまうリスクが高い。

一方有性生殖は、増え方はゆっくりでも、みんな違うから、何か病気が流行っても、生き残れる可能性が高い。それぞれが違えば違う程、繁栄できる、システムなのです。

 

今も既に言われ始めていますが、これからは人と違いがあればあるほど、つまり個性があればあるほど、価値がある世の中になっていく、と言われています。実際、画一的に、言われたことだけしかできない人材、というものの価値は薄まっています。それは、画一的なルーティン化できる仕事はロボットがやってくれるから人間は創造的に働くことがすでに求められ始めているからです。

19世紀には、人権という観点で注目されたものが、21世紀の今、今度は個性を大切にする、という観点からまた再注目されたからこそ、こうして人々の心の琴線に触れているのでは、と思います。

それは私達が生き物として有性生殖を選んだ瞬間から始まっていたのかもしれませんね。

 

 

▼おわりに。絶対にクレジットも観るべき映画

なんやかんやと書きましたが、エンターテイメントとしてとても面白い映画でした。脚本がハマらなくても、各シーンが本当に細かい部分まで練り込まれているので、最後までいろんな視点で楽しめると思います。

お酒好き、歴史好きな人であれば、バーナムたちが飲む、飲み物に目がいくでしょう。貴族の飲み物と大衆の飲み物を上手く使い分けて、シーンが描き分かれています。ヒントはビール、です。

曲芸師のヒロイン役の演技も素晴らしいです。スタントなしだというシーンは圧巻でした。

最後の子ども達のバレエシーンでは、お願いごとをしたときに、バレエシューズを欲しがった子は中心で踊り、サンタの嫁になりたいと言った子は、木の役で出てきます(笑)このおちゃめな感じが彼女のキャラを演出していて面白いと思ったし、勝手にまた別の物語が想像できそうだと思いました。

(勝手な妄想ですが、サンタの嫁になりたいといった彼女は将来、おもちゃ屋さんを創業する人物とでも結婚しそうです(笑))

 

そしてなんといってもクレジット。邦画だと色々小ネタを盛り込むことが多いですが、洋画はいつもかなりシンプル・・・

のはずが、とても素敵な油絵をバックにクレジットが流れます。

これもまた、伝統的、古典的な芸術とバーナムが立ち上げた大衆のエンターテイメントの対比となっているようで面白かったです。(絵もきれいでした)

 

というわけで、鑑賞の際はぜひクレジットも最後まで。